電子技術は、意匠の壁にならない — 特注照明の電子設計 Cool Backline Lab に込めたこと
目次
作りたい光があるのに、電子で止まっている#
デザイナーや、照明を手がける板金メーカーの方と話していると、同じ悩みを何度も聞きました。作りたいものはたくさんある。けれど電子の知識がないので、作れない。
調光、フェード、センサ、バッテリーの制御。どこかで必ずつまずき、製品化そのものを諦めた例もありました。たとえば、こんな話です。
- 明るさを滑らかに変えられないので、そういう照明は作れなかった
- スイッチを押すたびにモードが切り替わる制御ができず、ON/OFF のスイッチで点けて消すだけの照明になった
- バッテリーで動く照明を作りたかったが、途方もない時間がかかりそうで踏み出せなかった
最後の話には続きがあります。一緒に開発を進めて約1年後、その照明は製品になりました。Y.S.M. とデザイナー UUD による特注ポータブルランプ「Moment」です。iF Design Award 2026 を受賞しました。CBL は電子回路と調光制御を担当しています。
意匠はできている。足りないのは電子の側だけ。それなら、電子が壁にならないようにすればいい。サイトに掲げた「電子技術は、意匠の壁にならない」という言葉は、ここから来ています。
照明に関わる人に向けて、サイトを分けた#
株式会社クール電子には、コーポレートサイトがあります。ただ、照明に関わる方に伝えたいことは、電子機器メーカーとして発信することとは違うと考えました。
想定しているのは、インテリアや空間のデザイナー、特注照明を扱う建築の方、そして照明メーカーです。照明メーカーの中でも、機構は得意だが電子は苦手なところ。AC の電気は得意だが、DC や組み込みは不得手なところ。こうした方々には、回路の仕様より先に「どんな光が実現できるか」を見てほしい。そう考えて、CBL を独立したサイトにしました。
名前に込めたもの#
Cool — 熱を出さない設計#
Cool は、クール電子の「クール」から来ています。クール電子のクールは、発熱を抑えられる設計をする、という意味です。
照明では、これがそのまま組み込みやすさにつながります。熱がこもらなければ、小さな場所にも組み込めます。基板から逃がす熱が少なければ放熱に必要な面積も小さくて済み、基板そのものを小さくできる見込みが出てきます。
そのために、電源回路は2つの方式を使い分けます。
1つは、高効率なスイッチング電源です。発熱は小さい一方で、部品が多く、実装面積と設計の知識が必要です。もう1つは、電圧の差を熱にして降圧する LDO です。構成がシンプルで、面積を節約できます。
熱を抑えるか、面積を抑えるか。どちらを優先するかを案件ごとに考えて、選んでいます。
Backline — ステージの機材と、裏から支えること#
Backline には2つの意味を重ねています。
1つはステージの機材です。光の演出を通じて、舞台照明にも関わりたいと考えています。もう1つの理由は、私が目標にしている Blackmagic Design が、映像制作の現場の機材をつくる会社だからです。
Blackmagic Design に惹かれているのは、まずその思想です。クリエイターの創造力を全力で支え、かつて一部の人にしか手が届かなかった映像制作の機材を、誰もが使える価格で届けてきたこと。そして、小さな会社から世界に通用するメーカーになったこと。それも、本社をオーストラリアに置いたままで。
もう1つの意味は、裏から支えることです。電子回路は照明の中に隠れ、表には出ません。主役は意匠であり、光です。
下の写真は CBL の基板です。灯っている LED のすぐ内側に、その光を制御する回路が並んでいます。

説明するより、体験してもらう#
CBL のトップページには、明るさを下げていくスライダーがあります。一般的な調光器と CBL の調光を並べ、暗くなるほど差が出る様子を見られるようにしました。Craft のページには、階調の段数を増やすと、階段が曲線に近づいていくスライダーを置いています。
低輝度でもちらつかないこと。PWM の分解能が細かいこと。これは言葉で説明するより、違いを見てもらうほうが伝わると考えました。暗いところで段数が足りなくなる理由は、256階調を超えて に書いています。
一社ではなく、チームとして#
CBL の仕事は組み込みです。完成した照明に、CBL の名前が表に出ることはあまりありません。
だからこそ、1社で完結させるつもりはありません。意匠を担うデザイナー。筐体や照明そのものを設計する Y.S.M.(埼玉の、板金加工から発展した特注照明メーカー)。基板を実装する工場。こうした協力会社も含めて、1つのチームになりたいと考えています。サイトで使っている「ギルド」や「私たち」という言葉は、この体制のことです。
工芸と光#
チームを組みたい相手として、伝統工芸も思い描いています。
沖縄の小さなカフェに、地元のやちむんや琉球ガラスでつくった照明が置いてあったら、その空間はきっと素敵です。工芸の手仕事と、電子で整えた光を組み合わせたい。CBL の Philosophy のページに、やちむん・琉球ガラス・木工・和紙を挙げたのは、そのためです。
その先に目指しているのは、海外の大きな開発案件と、Blackmagic Design のような自社製品の開発・製造・販売です。
まずは気軽に#
CBL への相談の入口は、Instagram の DM にしました。デザイナーや海外の方には Instagram を使っている方が多く、問い合わせフォームより気軽に連絡できると考えたからです。開発の様子も、Instagram で発信していきます。
バッテリーで動かしたい。もっと小さくしたい。暗いところまで滑らかに調光したい。スイッチの操作でモードを切り替えたい。電子まわりで困っていることがあれば、まずはご相談ください。
- サイト: Cool Backline Lab
- 相談: Instagram @cool_backline_lab の DM
- Instagram をお使いでない方は、お問い合わせフォームから