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デジタル信号の高調波とは

·2112 文字·5 分 EMI・ノイズ対策
目次

デジタル回路は、電圧によって信号の「0」と「1」を表現し、伝送しています。一般的に、デジタル信号は矩形波と呼ばれる波形となっています。クロック信号は電圧変化の回数が非常に多いため、EMI への影響も大きくなります。等間隔の周波数でノイズが出ている場合は、高調波対策をすることでレベルを下げられる可能性があります。

デジタル回路の波形

矩形波の周波数成分
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数式で確認
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矩形波をフーリエ級数展開すると数式内で高調波を確認できます。矩形波(デューティ比 50% のとき)の式は以下の通りです。

$$ f(x) = \frac{4}{\pi}\left\{\sin(x) + \frac{1}{3}\sin(3x) + \frac{1}{5}\sin(5x) + \frac{1}{7}\sin(7x) + \cdots\right\} $$

各 sin の項の振幅と周波数に注目すると、

  • 1 つ目:基本波。周波数は 1、振幅も 1
  • 2 つ目:周波数は 3 倍、振幅が 1/3(3 倍波)
  • 3 つ目:周波数は 5 倍、振幅が 1/5(5 倍波)
  • 4 つ目:周波数は 7 倍、振幅が 1/7(7 倍波)

シミュレーション FFT で確認
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LTspice 上で矩形波を FFT 解析した結果です。

波形条件

  • 振幅: 1 V
  • 周波数: 10 MHz
  • デューティ比: 50%
  • 立ち上がり・立ち下がり時間: 15 ns

周波数成分の結果

周波数 (MHz)フーリエ成分正規化フーリエ成分
100.63661.000
300.21220.3333
500.12730.2000
700.090950.1429

10 MHz、30 MHz、50 MHz、… と、10 MHz の奇数倍の周波数にスペクトラムが立っています。

矩形波の FFT 波形

クロック(矩形波)の高調波
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高調波の特徴
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高調波には次のような性質があります。

  • スペクトルの間隔は基本波の周波数と同じ
  • 基本波よりも低い周波数に成分は存在しない
  • 基本波と高調波、隣接する高調波との間には成分は存在しない
  • N 倍波のレベル(振幅)は基本波の 1/N(N は奇数)
  • デューティ比が 50% の場合は偶数次の高調波は存在しない
高調波の特徴(スペクトラム分布)

クロック波形の周波数成分
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矩形波は、基本波に奇数次の高調波を重ね合わせたものと考えることができます。

基本波と高調波の合成

基本波に奇数次の高調波を順に加えていくと、波形がどのように矩形波へ近づくかを確認できます。

基本波のみでは、なめらかな正弦波です。

基本波のみ

3 次高調波まで加算すると、矩形波の輪郭がうっすらと現れ始めます。

基本波 + 3次高調波

5 次高調波まで加算すると、肩の部分がより水平に近づきます。

基本波 + 5次高調波まで

7 次高調波まで加算すると、さらに矩形に近づきます。

基本波 + 7次高調波まで

9 次高調波まで加算すると、見た目上ほぼ矩形波に近い波形になります。

基本波 + 9次高調波まで

次数を上げるほど波形の変化は小さくなっていきます。逆に考えると、高い次数の高調波はクロック波形の見た目にあまり影響を与えません。そのため、ローパスフィルタ(LPF)を使って高周波部分を除去しても、波形を大きく変えずに高周波ノイズを抑えることができます。

LPF を追加してシミュレーション
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矩形波発生源の後段にローパスフィルタ(LPF)を挿入したシミュレーション回路で確認しました。

LPF を追加した回路図

AC 解析でフィルタの周波数特性を確認すると、カットオフ周波数(15.8 MHz 付近)から減衰が始まっていることがわかります。

LPF の AC 解析結果

時間領域でフィルタ通過前後の波形を比較すると、通過後の波形はエッジがなまっていますが、クロックとしては問題なく動作する形状を保っています。

LPF 通過前後の波形比較

周波数領域(FFT)でフィルタ通過前後を比較すると、70 MHz から 1 GHz にかけての高調波が減衰しており、ノイズ対策として効果があることが確認できます。

LPF 通過前後の FFT 比較

クロック波形と周波数成分の関係
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台形波を考えます。現実のクロック波形は台形波です(立ち上がり・立ち下がり時間が 0 ではないため)。台形波は、周期・パルス幅・立ち上がり時間(立ち下がり時間)の 3 つのパラメータで特徴づけられます。

パラメータ

  • 周期:T
  • パルス幅:tp
  • 立ち上がり時間:tr
  • 立ち下がり時間:tr(立ち上がり時間と同じ)
  • デューティ比:50%
台形波(クロック波形モデル)

立ち上がり成分のカットオフ周波数
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立ち上がり時間と、周波数成分のカットオフ周波数(振幅が −3 dB となる周波数)fr の関係は次の式で知られています。

$$ f_r = \frac{0.35}{t_r} $$

立ち上がり時間が 1 ns の場合、カットオフ周波数は 350 MHz となります。

高調波の包絡線
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矩形波のスペクトラムの包絡線を考えます。LTspice の FFT 結果に直線で包絡線を引くと、A 点と B 点の 2 箇所で直線の傾きが変わります。

各点間の領域では次のようにレベルが変化します。

  • A 点よりも低い周波数では、包絡線のレベルは一定
  • A 点と B 点の間では、−20 dB/dec で減少
  • B 点よりも高い周波数では、−40 dB/dec で減衰
高調波の包絡線(A点・B点)

境界の周波数とノイズ対策
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各点の周波数はそれぞれパルス幅と立ち上がり時間で決まります。

$$ f_A = \frac{1}{\pi t_p}, \quad f_B = \frac{1}{\pi t_r} $$
  • パルス幅が小さくなると(周波数が高くなると)、A 点が右に移動する
  • 立ち上がり(立ち下がり)が急峻になると、B 点が右に移動する

一般的なノイズ対策である「クロックの周波数を下げる」「立ち上がり速度を下げる(波形をなまらせる)」が有効な手法であることと合致します。

まとめ
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高調波の特徴
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特徴内容
スペクトル間隔基本波の周波数と同じ
低周波側基本波より低い周波数に成分は存在しない
隣接成分高調波の間には成分は存在しない
振幅N 倍波のレベルは基本波の 1/N(N は奇数)
デューティ比 50%偶数次の高調波は存在しない
波形への影響低い次数の高調波成分が支配的

ノイズ対策
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次の方法で高調波に起因するノイズレベルを下げることができます。

  • ローパスフィルタで高次の高調波を除去する
  • クロック周波数を下げる
  • 立ち上がり(立ち下がり)速度を下げる