配線長による共振とノイズフィルタのEMIへの影響
目次
共振時のスペクトラム#
リンギングが発生している矩形波を、時間領域と周波数領域の両方から観察します。この節では、抵抗負荷を用いた基本的な伝送線路のシミュレーション回路を使用します。

時間領域で見ると、矩形波のエッジ付近に振動的な波形(リンギング)が現れています。

同じ信号を周波数領域に変換すると、300 MHz 付近に鋭いピークが立っていることが確認できます。このようなピークがスペクトラムに現れると、EMI 試験で問題になります。

共振と信号の立ち上がり速度の関係#
共振が起こるリスクを下げる#
配線が共振しにくくなる条件として、次の関係式が知られています。
$$ \text{配線長} \ll \frac{\lambda}{4} $$10 cm の配線であれば λ/4 = 10 cm、つまり波長が 40 cm より長い信号(周波数が低い信号)であれば共振のリスクは小さくなります。
立ち上がり時間の目安として、正弦波の半周期を対応させて考えます。

配線長 10 cm のときの立ち上がり時間を計算#
基板の比誘電率を 4 と仮定し、波長 40 cm に対応する周波数を求めます。
$$ \frac{c}{\sqrt{4}} \cdot \frac{1}{0.4} \approx 374.7 \, \text{MHz} $$この周波数に対応する立ち上がり時間は、次の式から求められます。
$$ t_r = \frac{0.35}{f} \approx 0.35 / 374.7 \times 10^6 \approx 0.93 \, \text{ns} $$立ち上がり時間がおよそ 1.3 ns 以上であれば、10 cm の配線での共振リスクは低くなります。
シミュレーションで波形を確認#
LTspice 上で立ち上がり時間を変え、RLC 素子を通過した後の波形を比較しました。使用した回路は以下の通りです。

- tr = 1 ns:波形が振動し続け、リンギングが持続する
- tr = 10 ns:矩形波として問題のない波形になる

周波数領域で比較すると、立ち上がり時間が短いほど高周波成分が強く残っていることがわかります。


基板の寄生成分は、1 cm あたり次の値を目安として使用しています。
- R:1 mΩ/cm
- L:10 nH/cm
- C:5 pF/cm
フェライトビーズを使ったノイズ対策#
シミュレーション条件#
- 負荷容量 CL = 5 pF
- 配線長 10 cm を想定(R = 10 mΩ、L = 20 nH、C = 10 pF)
- フェライトビーズ:村田製作所製 BLM18RK601SN1(SPICE モデルを使用)
回路構成は次の通りです。

シミュレーション結果#
まず時間領域の波形を比較します。フェライトビーズを挿入する前は、振動が大きく残っています。

挿入後は振動が抑えられ、矩形波として安定した波形になっています。

周波数領域でも同様の効果が確認できます。挿入前は共振周波数(290 MHz 付近)に大きなピークが立っています。

挿入後はこのピークが低減し、スペクトラム全体のノイズレベルも下がっています。

フェライトビーズは高周波域でインダクタとして働き、インピーダンスが上昇するため、高周波成分を減衰させる効果があります。
共振のコントロール#
共振が最大になる条件#
線路の一方が短絡、もう一方が開放になっている場合、λ/4 共振が発生し、共振が最大になります。短絡側が定常波の節、開放側が腹に対応します。

反射係数#
反射係数 Γ は次の式で表されます。
$$ \Gamma = \frac{R - Z_0}{R + Z_0} $$共振を小さくするには反射係数を 0 に近づける必要があり、終端インピーダンスを線路の特性インピーダンス Z₀ に合わせることが有効です。
そのほかの共振を抑える方法#
- 誘電体材料の活用:損失のある誘電体材料を使用し、線路全体で信号を減衰させる
- スナバー回路の挿入:R と C の直列回路(スナバー回路)を部分的に挿入し、損失を持たせる
まとめ#
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 共振の影響 | 高周波ノイズが発生し、スペクトラムにピークが現れる |
| 共振リスク低減 | 信号波長の 1/4 に対して配線長が十分短ければリスクが下がる |
| フェライトビーズ | 共振による不要な周波数成分を除去し、ノイズ性能・波形品質を改善できる |
| 終端 | 終端インピーダンスを特性インピーダンスに合わせると反射係数が 0 に近づく |
| スナバー回路 | RC 直列回路を挿入して損失を与え、共振を減衰させる |
シミュレーションベースの検討であるため、実機では挙動が異なる可能性があります。実機でノイズ問題が発生した場合は、発生箇所を特定したうえで対策を進めることをおすすめします。