標本化定理と折り返しひずみ
目次
アナログ量をデジタルシステムで処理・伝送するためには、アナログ信号を離散的な数値の列に変換する必要があります。
サンプリング#
連続したアナログ信号から一定の時間間隔で信号を取り出すことをサンプリング(標本化)といいます。この一定の時間間隔がサンプリング周期で、その逆数がサンプリング周波数です。サンプリングを行うと、時間軸について離散化されます。
アナログ信号をデジタル信号として扱うためには、取り出した値も離散化する必要があります。この記事では触れませんが、値の離散化のことを量子化といいます。
標本化定理#
アナログ信号をデジタル信号に変換するとき、元の信号に含まれる周波数成分の 2倍よりも高い周波数 でサンプリング(標本化)すれば、元の信号を再現することができます。
サンプリング対象の信号に含まれる最速の周波数成分に対して、十分な速度でサンプリングしなければ、元の信号を正確に表現できなくなります。サンプリング周波数が不十分なときは信号を復元できず、歪みが発生します。
ナイキスト周波数#
サンプリング周波数の 1/2 の周波数をナイキスト周波数といいます。
サンプリング周波数が 120 Hz なら、ナイキスト周波数は 60 Hz となります。このとき、サンプリングしたい信号の周波数が 60 Hz よりも低ければ、正確に元の信号をサンプリングすることができます。
60 Hz よりも高い成分が含まれていた場合、**折り返しひずみ(エイリアス)**となり、元の信号を正確に表せません。
折り返しひずみ(エイリアシング)#
サンプリング前の信号にナイキスト周波数よりも高い周波数成分が含まれていた場合、**折り返しひずみ(エイリアシング)**が発生します。
ナイキスト周波数よりも周波数が高い部分は、ナイキスト周波数を対称軸として低周波側に折り返されて現れます。折り返しひずみが発生すると元の信号に存在しない信号成分が現れるため、元の信号を正確に復元できなくなります。
例えば、ナイキスト周波数が 60 Hz で、サンプリング前の信号に 80 Hz の成分が含まれていた場合を考えます。この 80 Hz の成分はナイキスト周波数で折り返され、サンプリング後には 40 Hz の信号に見えます。
$$ 60 - (80 - 60) = 40 \, \text{[Hz]} $$10 Hz の場合#
10 Hz はナイキスト周波数よりも小さいので、正常にサンプリングできます。
80 Hz の場合#
80 Hz はナイキスト周波数よりも大きいため、ナイキスト周波数(60 Hz)で折り返して 40 Hz になってしまいます。
サンプリング前の信号で 80 Hz ですが、サンプリング後の信号は 40 Hz になります。
10 Hz と 80 Hz の合成信号の場合#
10 Hz の成分は正常にサンプリングできますが、80 Hz の成分は折り返して 40 Hz になります。そのため、サンプリング後の波形は、10 Hz と 40 Hz が合成された信号になります。
40 Hz と 80 Hz の合成信号の場合#
理論上 40 Hz の成分は正常にサンプリングできますが、80 Hz の成分は折り返して 40 Hz になります。サンプリング後は、元の 40 Hz と折り返しの 40 Hz が足し合わされてしまい、正確な信号を得ることはできません。
元の 40 Hz と折り返しの 40 Hz が合成され、振幅が 0 になってしまうこともあります。(サンプリング後の波形は元の 40 Hz と 80 Hz の位相関係によって変化します。)
アンチエイリアシングフィルタ#
サンプリングする前に折り返しひずみの原因となる帯域をカットするためのローパスフィルタのことを、アンチエイリアシングフィルタといいます。
フィルタは、LC フィルタなどのアナログフィルタでも、FIR フィルタなどのデジタルフィルタでも大丈夫です。
合成信号の考察#
先ほどの 10 Hz と 80 Hz の合成信号の場合、サンプリング後に折り返しの 40 Hz をカットするローパスフィルタをかけると 10 Hz の信号を分離することができます。
一方で、40 Hz と 80 Hz の合成信号の場合は、サンプリング後に元の波形と折り返しによる波形を区別できないので、折り返し成分だけを分離することができません。そのため、サンプリング前に 80 Hz の信号を除去するアンチエイリアシングフィルタが必要になります。
まとめ#
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| サンプリング | アナログ信号から一定の時間間隔で信号を取り出して離散的な数値の列に変換すること |
| サンプリング周波数 | サンプリング周期の逆数 |
| 標本化定理 | 元の信号の最高周波数成分の 2 倍よりも高い周波数でサンプリングすれば元の信号を再現できる |
| ナイキスト周波数 | サンプリング周波数の 1/2。120 Hz サンプリング時は 60 Hz |
| 折り返しひずみ | ナイキスト周波数より高い成分がナイキスト周波数を対称軸として折り返されて現れる歪み |
| アンチエイリアシングフィルタ | 折り返しひずみの原因成分を除去するローパスフィルタ。サンプリング 前 に適用する必要がある |